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暖房というものではなく、気候というべきものだったのである。

この言葉は建築家のフランク・ロイド・ライトが帝国ホテルの建築のため来日した折、大倉男爵の東京の自邸の一室、「朝鮮の間」でオンドルを経験した時の言葉です。単なる室内設備を超え、場そのものが人を包み込む環境として立ち上がる瞬間を、ライトは「気候」と呼んだのです。

「ライトの住宅」

私自身も、Earthing Miyamaの蔵サウナでの一夜にその言葉を思い出した。ちょうど一年前の年末、迂闊にも蔵サウナの2階で新しい年を迎えてしまった。朝起きたら、濃い芋焼酎の入ったグラスだけがあり、布団も敷いていない。蓄熱式サウナストーブのレンガに蓄えられた熱がじんわりと放射され、扉や小窓を開けて外気を取り込んでいるにもかかわらず、室内は快適な温度を保っていた。こたつで寝落ちした時のような不快感もなく、むしろ屋外で眠ったときのような自然な目覚めが訪れた。そこには「暖房」という人工的な装置ではなく、空間全体が「気候」として作用する体験があった。

「気候を設計する」とは、温度や湿度を数値で管理することではない。素材が呼吸し、熱が蓄えられ、外気が循環し、時間の移ろいとともに場が変化する。その総体が人の身体に「環境」として作用するとき、空間は単なる室内を超えて「気候」となる。

あれから、もう間もなく一年がたつ。巨匠の言葉に触れたことをきっかけに、酔いつぶれて高円寺の北口広場で一晩寝てしまった屋外での記憶体験と一緒だったことに気づいた。あれは初夏だった。

蓄熱式サウナストーブの推し活(ファンダム):
ヒミエルストーブ 
https://himielstove.com/
Earthing Miyama 
https://earthing-miyama.jp/
赤星デザイン事務所 
https://hoshi.red/ 
アトリエ・ナカウテ一級建築士事務所
http://nakaute-arc.com/

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丸山 耕佑

移住してきた建築家の丸山耕佑(まるやまこうすけ)です。1級建築士でアトリエナカウテ一級建築士事務所代表をしています。新しい公共の建築を目指して、東京の建築事務所を辞め、ナカウテに拠点を移しました。日本家屋にある蔵をフィンランドの伝統でもあるスモークサウナにアレンジし、宿と農村体験を結びつけた宿泊施設...

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