蓄熱式サウナストーブの推し活(ファンダム)

久米屋では昨年京都府南丹市美山町にオープンしたEarthing MIYAMAの長谷川さんと一緒に共同PRを行っています。活動のメインは両方の施設で共通する「蓄熱式サウナストーブ」の良さをより多くの人に知ってもらうための研究活動。このストーブは、エストニア・ヴォル地方のオールドスモークサウナから派生したもので、薪で焚いた熱を石やレンガ、さらにはサウナ室内に蓄え、余熱で室内を温めます。これにより、電気式や鉄のストーブとは違うまろやかな熱を感じられ、長時間暖まれるサウナが可能となるのです。
「作ってみた。」から体験してみませんか?
この日は、Earthing MIYAMAのサウナ製作でご一緒したストーブビルダーの西岡さん(通称:ヒミエルさん)が自身で蓄熱式サウナストーブを使ったサウナを作ってみたから体験しませんか?というお誘い。技術者が考えるサウナを体験できるまたとない機会、友人カメラマンであり、蓄熱式サウナのファンでもある赤星デザイン事務所の赤星さんを誘ってヒミエルさんの工場に向かいました。
こうばサウナ

工場に着くと、火焚きの最中で木製パレットの上に積まれた耐火レンガの塊に3m程度高さの煙突が接続されたストーブが、煙を吐き出すことなく綺麗に加熱されていた。特徴を上げると下記の通り。
- 耐火レンガ(23cm x 114cm x 65cm)が150個程度使用されている。
- 重量 500kg程度
- 火焚き時間 3時間
- チャンネル型(※1)を応用したストーブ
- ストーブの表面温度は100℃以上
- テスト用なので空積み
(※1) 燃焼炉で燃えたガスが内部に配された煙道(チャンネル)を行ったり、来たりしながら熱交換する構造のヒーター
まず、驚いたのは目地がなく、所々に隙間のある積み方であるのにも関わらず、ストーブから煙が漏れ出していないこと。これは、炉内でよく燃えていることの証明であり、燃焼ガスがチャンネルを通るたびしっかりと熱交換がおこなわれていることです。やっぱ煙突大事ですね!
次に、火焚き時間。3時間の過熱でストーブの表面がしっかりと暖まっています。蓄熱タイプのストーブは熱を物質に移動させることで暖かさが得られるストーブなので、巨大な出力を求めれば、おのずとストーブ自体が大きくなり、火焚き時間もストーブの大きさに比例して長くなります。この火焚き時間の長さは施設運営者にとってネックになることもあり、設置を断念することが多いという現状。しかし、ヒミエルさんのストーブはコンパクトに、かつ、効率よく熱交換がおこなわれるように設計されているため加熱時間も短くなっています。
そして、私が思う最大の魅力はバラシてすぐに作り直せること。 蓄熱式サウナストーブってあまり実例がないので、とにかく作って検証していくことしか今のところ知る手段がありません。目地を入れて丁寧に組んでいっては時間がかかりすぎるので、何度もバラせることはスタディのスピードを格段に加速させます。さらに、基本的にはレゴブロックのように積むだけの構造なので、子供でもアプロ―チしやすいことも特徴です。誰でも作る気さえあれば作れるのです。


こうばサウナはどんなサウナ?
さて、火焚きも終え、こうばサウナを体験する時間。気持ちが昂ります。フォークリフトに乗ったヒミエルさんがストーブを所定の場所まで運んでいきます。フォークリフトでスト―ブを運ぶのはきっとここだけ(笑) この際、煙突はもうすでに外れています。それから、熱々に熱せられたマッシブな箱を覆うようにタープを張り、ストーブの周りに即席でベンチを配置しています。タープの側部を下すと、レンガに蓄えられた熱が放出され、サウナ室を一気に温めていきます。いつも入るテントサウナとは異なり、温度もかなりパワフルです。


そして、お待ちかねのロウリュウ。直火で熱せられたストーンに水を掛けた途端、一気にサウナ室はスチーム状態に。ロウリュウした時の体感は久米屋やEarthing MIYAMAのサウナとほぼ一緒。いや、おそらくそれ以上。バッと毛穴も開いて汗も大量に吹き出す気持ちの良いサウナでした。他に気づいたところをいうと、こうばサウナは久米屋やEarthing MIYAMAと違って室内は蓄熱されていないので、まろやかな熱がずっと留まっているというよりは、ロウリュウの度に熱が入れ替わり新陳代謝する、駆け足の様なサウナ。施設で運用するとすれば、室内の蓄熱性を上げて、短時間で時間を区切って、追い炊きを繰り返し、一日で何組も受け入れる公衆浴場として運営に向いているかもしれません。2セットのサウナ体験はとても貴重な体験で大量の汗と共に多幸感を存分に味わうことができました。ヒミエルさん、ありがとう!!


「作ってみた。」を体験して「自分でやってみよう。」
ヒミエルさんが作ったサウナを体験する会に参加した私たちはますます、蓄熱式サウナストーブの虜に。長谷川さん、赤星さん、私を含めてヒミエルさんの「作ってみた。」を体感して「自分でやってみよう。」そう思ったはずです。長谷川さんは早速Earthing MIYAMAで蓄熱式サウナトーブWSを計画中、赤星さんは自宅用に、私も久米屋で準備中の「アトリエ・ナカウテのサウナラボ」の運用のヒントになりました。そして、ヒミエルさんはもうすでに最新作に向けて構想があるとのことでした。早い、早い!このように、皆が自分のところに持ち帰ってやってみようと思えたのは、技術者であるヒミエルさんが「つくり手」と「受け手」を分けずに、持っている技術やノウハウを参加した私たちにギブ(贈与)してくれたこと。これにつきます。感謝、感謝!この贈与により僕らは消費者にまわることなく、知識をゲットできたのだと。

『ファンダムエコノミー入門 著者 コクヨ屋外学習センター・編』という本の中では、こんなことが書かれています。

ファンダムエコノミーは「ギブ」でまわる。
80年代まで主流だった学校教育には、知識はもっていればもっているほど良いという前提があり、個人に知識が蓄積されることでそれが個人の価値となるといった発想だったと思います。つまり知識は、資産として貯蓄されるものだったんですね。ところが、ファンダムにおけるファンたちの振る舞いを見ていると、もっている知識はどんどん共有するほうが自然だと見なされています。あるいは、共有したいという心情に突き動かされている感じがします。「ジャジャーン、見て見て。わたし、こんなことに気づいちゃった」「こんなことやってみちゃった」「つくってみちゃった」「もってきちゃった」といったことが常にそこかしこにあるんです。
そこにあるのは自分が「ギブ」したものを相手に「ゲット」してもらう喜びなんですね。
蓄熱式サウナストーブ・ファンダム
この体験会を含めたこの一連の活動は何なのか?それは一言でいうと、蓄熱式サウナストーブの「推し活=(ファンダム)」 蓄熱式サウナストーブの事を考えるのが楽しくて、思い通りにいかないパンドラの箱、蓄熱式サウナストーブの魅力に皆取りつかれている笑
この感じを皆に伝えたい!今後は、この蓄熱式サウナストーブのファンを増やすために、Earthing MIYAMAの長谷川さん達と一緒に色んな企画を考えているところなので乞うご期待。

- 施設に蓄熱式サウナストーブを設置したい施設運営者
- 自宅に設置したい人
- 蓄熱式サウナストーブを体験したい人
などなど、蓄熱式サウナストーブ・ファンダムを一緒に取り組みたい方、一緒しましょうー。
お問い合わせ待っていますー。
写真:赤星デザイン事務所
テキスト:アトリエ・ナカウテ一級建築士事務所
参加者:
ヒミエルストーブ
https://himielstove.com/
Earthing Miyama
https://earthing-miyama.jp/
赤星デザイン事務所
https://hoshi.red/
アトリエ・ナカウテ一級建築士事務所
http://nakaute-arc.com/